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2008.08.10

スカイ・クロラを観てきたよ(ネタバレあり)

Sky本当は初日に行きたかったんだけど・・・。

今作の感想を一言で言うと
「あまり押井守っぽくないなぁ。でもおもしろいなぁ。」
って感じでした。監督自身も今までの演出はあまり使ってないという事を予め述べていたみたいでしたが、それにしたって淡白過ぎな印象だった。
それでも十分おもしろかったんですが、僕はいつもの小難しくて難儀で鬱屈してて閉塞感があってクールでアクションシーンがカッコ良くてどこか達観しつつも青臭い人物が出てくる押井作品が大好きなのに!

確かに魚眼レンズのカメラワークがあったり、パブの佇まいはどこか上海亭を彷彿とさせたり、ワンカット映像の人物の仕草や兵器の描写は押井テイストを感じたけれど、妙にしっくり来ない感じはありました。

結局は
●終わらない日常
●平時の延長としての戦争
という、いつものテーマではあったんですが。
「絶対に勝てない存在」というチートキャラがいるのも、 "そのままだと日常から永遠に抜け出せないけど勝ってしまうと全て終わってしまうから勝てない様になっている" という、すごく過去の押井作品の様な、ゲーム的な発想を彷彿とさせて懐かしかったですが、それでも全体の印象としては弱い感じでした。

やっぱり押井テイストを抜いて普通に作ってしまうと、どうにも印象が薄くなるんですね。多分マニアだけでしょうけど。

それは例えばいつものバセットハウンド(ガブリエル)が出ては来るけど、いつもの押井作品の様な「犬の目」という物語の傍観者の象徴として描かれておらず、只のペットとして描かれている所だったり。

あとは脚本家が伊藤和典じゃない所も理由かも知れません。
多分、押井守は何だかんだ言って「人間」にはあまり興味が無いというか、人間を作品の中心に据えて物語を作るのがヘタなんでしょう。

押井守作品の物語の中心は常に「状況」とか「社会の意思」とか「精神の所在」とかの抽象的な概念であり、そんな要素がシステマチックに折り重なり、その現象を登場人物が追いかけてストーリーを進行させる為、観客にそれを伝える狂言回しとなる人物無しにはうまくお話を回せないのかも、と思うのです。そして当然、狂言回しは劇中の登場人物であると同時に観客側の人間でもある為に、どこか傍観者として描かれます。

今までの押井作品にはだいたいそういう立場の人間(攻殻機動隊では草薙素子、パトレイバーでは篠原遊馬、うるせい奴らではメガネ、など)がいましたが、今回の作品ではその狂言回しとなる人物が不在の様な気がしました。当たり前の事ではありますが、「登場人物が全員作品の中にいる」のです。

そうなると登場人物自身に個性というか深い人間性が必要になってくると思うのですが、押井監督はそこを掘り下げるのが多分苦手なのです。
もちろん今までの作品にも狂言回し不在の作品はありましたが、その場合、ずっと押井作品を支えてきた伊藤和典の強力な脚本がその空白部分を埋めていたと思うのです。

でも今回はいわゆる「押井組」のスタッフが少ない気がしたので、そこの部分がフラットになってしまったのかも知れません。脚本家も違うし。
もっとも僕は原作を読んでいないので、原作通りに作っているのかも知れませんが。

とにかく、押井節を封印した以上はセリフでストーリーを引っ張らねばならんと思うのですが、そこがあまりに印象が弱い・・・。最初の方なんて皆んな会っていきなり自己紹介始めるし。それがあまりに当たり障り無くて何か気持ち悪い・・・。

でも演出は新境地な感じで引き込まれました。何はなくとも草薙さんのツンデレ萌えですね!これはエロかった!70年代の日活ロマンポルノか、楠本まきの漫画かというくらい嘆美な感じで良かった。特に車の中でハンドガン握り合うシーンとかもう。わりかし安直な嘆美趣味かも知れませんが、そこは普通に良かったです。

そしてやっぱり押井演出と言えば、戦闘が始まるまでの状況描写の緻密さと高揚感でしょう。今回も物語後半の大規模戦闘が始まるまでのシーン割りが見事すぎます。こういうシーンでの川井憲次の音楽とのタッグはもう神業ですね!兵装を整えつつブリーフィングを重ね、戦線を構築していく演出は押井作品が一番緊迫感があります。

あとちょっとした事ですが、人間に銃弾が当たった時の残酷な描写がリアリティがあって恐怖感があります。実際にそんな所見た事ありませんが、銃弾が空を切る音、金属と肉が同時に裂ける音、強力な衝撃を受けた身体が不自然にひしゃげる描写が圧倒的でした。
特に冒頭の激しい空中戦、脱出したパイロットが尚襲われて被弾して血しぶきが飛び、一瞬で肉片となって飛び散る無惨な描写が物語の非情で冷酷な面を鮮烈に印象づけていました。

押井節が無い分、そういった部分で今まで培ってきた、圧倒的な演出の技術がひときわ目立っていました。

キャストも意外と良かったです。菊地凛子は声優としてはヘタでしたけど雰囲気ありました。加瀬亮もジブリの映画観てるみたいな演技でしたがキャラに合っていたと思います。あと栗山千明うますぎ。

とりあえず DVD出たら空中戦の部分だけVJで使おうと思います。

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